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zoom RSS こけしの話(11) 蔦作蔵

<<   作成日時 : 2006/08/20 15:11   >>

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 原と写し(復元)は少々厄介な問題である。有機的だの無機的だのと議論されたこともある。弟子の作るこけしは当然のことながらその時の師匠のこけしを写すものであるが、これを写しとはいわない。職人の場合も同様である。弟子であっても師匠の古いものを忠実になぞって作ると写しとなってしまう。直治のように何人もの工人が取り組んでいるものもあるが、こうなると写しではなく「型」になってしまう。工人が作るこけしの時系列的変遷から離れて古品を忠実に模す場合が「写し」で、古品を題材にその意匠を借りて自己表現をする場合が「型」であるとするなら、「写し」は誰が作っても問題はないはずであり、出来のよい「写し」ほど創作意欲を封殺したものといえる。



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 今回はあまり人気のない蔦作蔵をとりあげる。蔦作は昭和10年代には相当多くのこけしを作り、現存する蔦作古品はほとんどが10年代のものであるとともに、かなり多くのものが残っている。換言すれば、10年代の蔦作が当時の需要にマッチしていたといえる。綺麗に清楚に嫌味なく、バリエーションの豊富さとちょっと見のよさが受けたのであろう。



 各種文献の評価では蔦作の職人でもあった渡辺求の作品の方に支持を与えている。「古作図譜」における両者の比較が代表的見解のようだ。掲出されているこけしだけの比較でいえばそうかもしれないが、蔦作の作品の選定に問題があるように思える。工人の比較評価をする際には、その代表作を比較検討すべきであって、眼前のこけしをもって一般論とすることには賛同できない。ちなみに無為庵は蔦作を高く評価しており、求を所蔵していない。



 前置きが長くなってしまったが、写真左は最近の入手。右は昭和58年に無為庵所蔵となったもの。拙著「蒐」ではもう1本の6寸とともにそれぞれの入手経緯を紹介しているが、一般的ではない本なので4寸の入手経緯の部分を再掲する。



 『小さい方は58年3月松屋入札品である。底値8千円に2百円のせただけで落札した。胴の色流れと蔦作不人気のためと思われる。当時、私はこのこけしの良さが分かっていたわけではない。下手な鉄砲がたまたま当たっただけである。某大家に「これは大正期のもので図録にのせてもいい位の価値がある」と言われたが、その意味するところが分からなかった。その後所蔵しているうちに次第に良さが見えてきた。平凡に見えて奥行きが深く、見る度に新たな想念を誘う。実に静かなこけしであり、持ち続けないと分からないものを持っている。』(「蒐」63ページから抜粋)



 写真右の入手当時はこの程度の認識しかなった、というよりも、安ければ何でも欲しい時期でこけしの味わいをじっくりと見極める余裕がなかったのであろう。「蒐」の執筆が平成元年であり、この間6年でこけしを見る目が相当変化したようだ。文中登場する某大家とは中屋氏であるが、氏の言葉がなかったら、いまだに安いものを数多くの収集が続いていたのかもしれない。 



 無為庵は退色についてはかなりの程度まで許容するが、色流れは見るも無残で所蔵したいとは思わない。ところが、写真右の蔦作に関しては所蔵し続けている間にこれはこういうものだと苦にならなくなってしまった。弥治郎もかつては土臭く地味に静かに健康な生命を持っていたようだ。色流れがありながらよくぞ今日まで残っていてくれた、そして、縁あって無為庵所蔵となってくれたと感謝の念すら浮かんでくる。そうは思いつつも色流れは人為による事故であり、やはり残念な思いは払拭できない。



 ところが最近になって、写真左の蔦作と出会うこととなった。やはり大正期で、面描の墨が一部薄くなっているものの、色流れのないほぼ完品といっていいものである。前髪の様式は弥治郎前飾りのルーツを窺わせ、古風な表情と大胆な胴絵を見たとき、右と並べてみたいとの思いがふつふつと湧いてきた。事情により高価な買い物をすることはできないのだが、久しぶりに何とかなるさエイヤッと入手した。家に持ち帰り旧来の4寸と並べてみると驚いたことに二本の旧蔵者が同じである。同時期に製作され、一緒に並べられていたであろうこけしが実に数十年ぶりに再会したわけである。



 「蒐」では6寸と写真右4寸を並べていたが、6寸はかなり表情の強いこけしであり、味において対極にあるような組み合わせだった。写真の二本は同種の味わいであり、二本並べることで静かな落ち着いた空間ができた。これで十分であるが、欲張りにも、これで色流れがなかったら、面描の墨がきちんと残っていたらと夢想する。(4寸)



(2016.11.2追記)蔦作蔵4寸2本のうち、昭和58年入手のものしか写真がみつからない。文中の最近入手品は実物を手放してしまったので新たに撮影もできない。拙著「撰」掲載品でもある昭和58年入手品のみを表情のアップも併せてお示しする。
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