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zoom RSS こけしの話(50) 高橋兵治郎

<<   作成日時 : 2016/05/02 13:29   >>

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 東日本大震災忘れじの記として「およねこけし」のしおりを紹介してから僅かひと月ほどで熊本大地震が起きてしまった。いかに地震国とて立て続けの大地震に言葉を失う。熊本、大分ではすでに千を超す有感地震で、そのご苦難やいかばかりか想像を絶する。余震の早期収束と平穏を衷心より祈念する。

 このような時節に呑気なことは不謹慎かもしれないが、平常の活動も必要かと思いこけし談義をすることとした。

 先日、あるこけし店に立ち寄った際、ヤフオクでの橘文策旧蔵品売り立てが話題になった。無為庵もなにがしか落札をしたが、保存状態には多大な難があるものの、橘文策の入手時期や入手経路などが記載されたものが多く、また、既存の解説書と反する事実が見えるものが現れるなど新たな知見を得られた大変面白いオークションだった。「知識から離れる」をモットーの無為庵ではあるが一年間随分と楽しめた。こう書くと知識の世界を堪能したかのように思われるかもしれないが、流石は橘文策で、味の良いこけしが相当数あり、本当の楽しみは知識よりも橘文策の眼だったように思う。
 
 橘文策売り立てオークション終了後、畏友SHAKAZ氏が高橋兵治郎を落札していたことを知った。木形子談叢234頁団体写真左から2本目(1尺2寸と表記されるが実寸は31センチ)のこけしである。たまたま無為庵も同写真右端(実寸24センチ)を入手しており、並べてみたが、談叢の「色気たっぷりなおばこ」や「肉感を描写した」との解説に違和感を覚えた。SHAKAZ氏に撮影を依頼しメールで数回のやり取りをしたが、参考までに紹介する。
 ちなみに底のシールには「久保(秋田県)、1932.11.29、高橋兵次郎」(日付は漢数字)と三行に書かれている。緑は褪色しているが、菊と思われる裏絵あり。


画像

第一回メール
SHAKAZ様
 写真の感想などを少々。以下、小生の兵治郎を小、貴兄所蔵品を大と表記します。
 白黒の効果か小の縦縞がはっきりして見え隙間が気になりません。これくらいの色合いが見る者をして表情に集中させるようです。大のピントを甘くして小に視線を集中させようとしているようですが、対照するという意味では大のピントをもう少し合わせたほうがよかったかと思います。小生の印象では大小とも眉の筆が雄渾だったと思いますが、写真ではインパクトに欠け、力感が減じたように見えました。光量・光線の故か目よりも鼻がやや目立ちすぎるように思いましたが、大小の表情の違いはよく捉えられていると思います。下瞼の描き方によるものか、大は強直でストレートに、小は集中を内に秘めやや斜めにものを見るような、それぞれの表情が出ています。全身図であれば墨の線が胴の途中までしか引かれていないことがはっきりします。通常の胴下端の跳ねた墨線は目障りですが、これは意図的に外したのでしょうか。

 こけしの鑑賞は、知識を削ぎ落とし、さらに削ぎ落とし、その本質をどう捉えたかがすべてだと思っていますが、小生の力不足で適切な表現ができません。例えば、「撰」表紙の鎌文は黒こけしになったとしてもあの心地よい曲線はたぐいないものですが、いくら言葉で表現しようとしても言い表せません。小生はこけしを見るとき、そのこけしの持つ奥行がどれほどかをみています。三白眼、四白眼などは集中力や険を強く表し、わかりやすいかもしれませんが、通常それ以上の奥行はありません。今回の写真の視点をどこに据えられたのか、ご見解をご教示いただければさいわいです。 

第二回メール
無為庵様
 視点の置き所ですが、今回は小の表情に焦点を絞りました。この2本を目の前にしたとき、とりわけ小の優しい目と柔らかい輪郭に魅力を感じます。カメラは小の目の高さに合わせ、大を見上げています。そのため大の鼻が強調され、眉の印象は薄れました。この場合、大はあくまで添え物です。
 こけしの輪郭を強調する工夫をしました。撮影の際、消費したエネルギーの95%ぐらいをこれに使っています。何事も度が過ぎると押しつけがましいので、見る人の印象に残らない程度に抑えています。
 談叢の写真は木地の色がまだ白いため、墨とのコントラスが強く出ています。特徴をあらわすという意味では、あの写真には到底及びませんが、ほどよく老いた色合いを出せるのではないかと思います。もう一度撮影してみます。

画像

第三回メール
無為庵様
 全身像を撮ってみました。図録の写真のようでつまらない気もしますが、表情を比較するには良いかもしれません。磨き上げた結果、表面の反射が強く、表情に影響を与えているように思います。もう少し工夫の余地がありますが、これを消すと質感がなくなるのでそのままにしています。

第四回メール
SHAKAZ様
 面白い写真です。確かにやや強い反射で表情が薄まっているようですが、このさじ加減をどうすれば良いか小生にはわかりません。
 2本の対比で発見がいくつかありました。感覚的な印象として「アイヌの娘」を想起しました。濃い眉、はっきりした顔立ちの鼻、アイヌの入れ墨を思わせる口、モンゴロイド系民族とは異なる南方系民族の特徴はこけしの中ではかなり異質なものですが、確かな存在感と力感(生命力)を感じます。後の兵治郎はのっぺりとした単調なこけしになってしまいますが、収集家の影響でしょうか、修復後の小奇麗になった史跡のようです。
 上記を踏まえて個別の印象を。大小の質的相違として年齢差ないしは発達度の差を思いました。前にも指摘しましたが下まぶたの相違が表情に相当影響するようです。さらに今回の写真で初めて気が付いたのですが、胸元の襟合わせに起因するようです。大はきっちりと行儀よく、小はややはだけ気味に胸元を合わせているような感覚になりますが、これは前襟線の微妙な角度の差によるもので、これが全体の印象に成熟度の差をもたらすようです。木地形態もどっしりと無骨な大、たおやかな小と見えます。意志強く端正な大、ややおしゃまに多少の媚を含む小、どちらを採るか好みのわかれるところでしょう。いずれを採るにせよ兵治郎の神髄はここに尽きると思います。 

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