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zoom RSS こけしの話(9) 猪谷春峰縮写

<<   作成日時 : 2006/06/24 17:55   >>

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 久しぶりの記事となってしまった。5月の連休にでも更新しようと計画していたが、パソコンがダウンしてしまい、修理に出しても結局修復できず、すべてのデータが失われてしまった。大事な記録もこけしの記録もメールアドレスも住所録も何もかも消えてしまい途方にくれている。バックアップしておけばよかったと後悔しているが、後悔先に立たずとはうまいことをいったものである。



 今回はこけしにまつわる情報を少々。下手な知識は鑑賞の邪魔にしかならず害になりかねないと思いつつ、たまには研究意欲に燃えている方へのサービスをすることにする。 



 無為庵は長年にわたり三寸こけしの収集を続けてきた。「無為庵三楽」と題し、91年版、93年版の写真集を発行していたが、入手したもののなかに本来の作と感覚の異なるものが数点あり疑問に思っていた。それでもこういうものもあるかと、それぞれの作品としていたものである。 ところが、あるとき写真掲載品など10点ほどを一括して入手する機会があり、あっと気がついた。



 さて、画像のこけしをご覧いただきたい。鎌文、忠蔵、盛、秀一、與始郎として見たときに違和感を感じないだろうか。一本ずつで見ると成程と思えるようなこけしである。だが、こうして団体にしたとき、すべて同一人の作になることが見えてくる。どれも三寸で、この疑問が湧いたとき、こけし辞典の小島正の記事を思い出した。「昭和13年の縮写こけし頒布の会も、小島正の工場で大沼正雄が挽いた木地に猪谷春峰氏が描彩したものを頒布している」との記述である。これらのこけしが縮写こけし頒布の会のこけしか否か、追求しようとしたが何の情報もなかった。



 無為庵コレクションをもう一度点検してみると、かつて疑問に思っていたこけしは正しくこの団体と同一人の手になるものである。その後、さらに数本を入手し、「無為庵三楽」2000年版では縮写こけしとして20点ほどを紹介したが、その時点でも、どういう経緯で作られたものか、猪谷春峰とはどういう人物かさっぱり分からない状態であった。いい加減あきらめていたが、ひょんなことからこの疑問が解明されるから面白いものである。



 神田の書肆ひやねで番頭さんに「こんなパンフレットがありましたよ」と教えられたのが「こけしの会」規約である。「こけしの代表作60本を選んで、それを一定の寸法に縮写し、鑑賞的であるばかりでなく、研究資料としても後世に伝えようとする企て」とある。監修有坂與太郎、選並に解説深沢要、製作者猪谷春峰、第1回頒布仙台・鉛・川湯・鳴子・一関、毎月5本頒布12ヶ月、毎月一円三十銭外に送料十五銭。頒布予定として50工人(省略)をあげ他は選定中となっている。



 さらに、縁は続くもので、日ならずして、昭和10年、建設社発行、郷土芸術案内所編の「愛玩」という本を同じ番頭さんから薦められた。愛玩家名鑑で編者は有坂與太郎である。当時の郷土玩具収集家139名(数え間違いはご容赦)の簡単なアンケート回答を纏めたものである。口絵に浜島静波玩具室の写真があり久四郎などこけしも3本写っていた。何かの参考になればと入手したところ、問題の猪谷春峰が掲載されているではないか。質問事項は、1収集の種類、2同動機、3生年月日、4現住所、5職業、6郷土玩具に対する感想の6項目である。猪谷春峰の回答は、1一般雑種類、2製作の参考、3明治23年3月23日、4豊島区西巣鴨、5彫刻、彩色、木目込、似顔、その他人形一般。となっている。



 勝手な憶測だが、縮写こけしは有坂與太郎が深沢要と猪谷春峰を結びつけ小島正が絡んで誕生したようだ。その関係の主導者が誰かは定かではないが、縮写こけしが真作と見間違うばかりのものであることは上記の経緯からして当然のことではある。小島正の又五郎写しはあまりにも有名であるが、これなども小島正であるか疑わしいものである。



 この頒布会の結末がどうなったか、猪谷春峰の詳細がどうであるかは今もって分からないでいる。ともあれ、入札会等でたまに三寸以外でも猪谷春峰かと思わせるようなものが登場することがある。真作よりも出来のよいものがあり、真作としての価格で取引されているので要注意。



 次回はまともなこけしを取り上げるのでお楽しみに。 



 ひやね番頭さんに多謝。








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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
別のHPを見て久々に拝見しに来ました。
とても勉強になります。
小島正さんですが,平成8年時点では生きてました。
当時私は仕事で良く鳴子に行ってたのですが,「バーこまどり」の看板がある家で老人が掃除などをしてました。
あれから10年なりますが,どうでしょう?誰か知ってるかもしれません。御健在でしたら何か聞けるかもしれませんね。
sk510713
URL
2006/07/31 10:21
コメントをいただきありがとうございます。縮写こけしの存在はかなり前から意識していたのですが具体的にどういうものか分からなかったものです。真似ることによる制約でどうしても不自然になってしまいますが、この不自然さは昨今の写しにもいえるものかと思っています。
無為庵
URL
2006/07/31 23:09
久々に日曜日鳴子へ行きましたら,バーこまどり(自宅兼)の玄関はベニヤ板で封鎖されてました。もう小島正さんは居ないのでしょうね・・・余談でした。
sk510713
URL
2006/09/12 17:06

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