こけしの話(20) 山尾武治

 忙しい時期となる前に更新すべくブログを開いてみると、アクセスがいつのまにか6000を超えていた。アクセス地域をみると大阪で同日同時間帯に多くの人がみているようだ。どのような経緯なのか興味がなくはない。



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 今回は無為庵愛蔵のこけし山尾武治をお目にかける。土湯から数度の移転を経て無為庵に落ち着いたのは平成2年2月のことであるが、以来17年、無為庵コレクションの不動の王座に君臨している。その間、請われて一度だけ松屋の展示に出品したが、他を圧倒する迫力があったのには驚いた。「山尾武治が王様?」と思われる方が大多数と拝察するが、この武治ほどの品格と量感と神秘とを併せ持つこけしは無為庵コレクションには存在しない。17年の間には名品といわれるものも入手したが、残念ながら、この武治を凌駕するほどのものには巡り会えていない。迫力、情味、品格、量感、姿形など個々の観点ではこの武治を上回るものはあるのだが、並べるとどれも一様に負けてしまう。



 相当に退色し、割れもあり、世辞にも保存状態がよいとはいえない。秋保様式の特徴である胴上下の緑ロクロ線も薄くなっているが、重ね菊と土の緑は残っており鑑賞に支障はない。というよりも、この状態だからこそ表情が生きてくるようだ。仮に保存状態が完璧であったならこのこけしの命である神秘感が相当に減退するように思えてならない。



 さて、この武治と同時期と思われるものがらっこコレクションに存在する。らっこ図録250番であるが、これは古名品展にも出展されており古作図譜137番と同一のものである。古作図譜解説では「土坡を赤と緑で描いて、ロクロの線は紫、頬紅をほんのりと塗って、色彩感覚がすばらしい」としている。らっこ武治は何回も見に行ったが実によいこけしである。惜しむらくは紫のロクロがうるさいと思うのだがそう感じるのはひとり無為庵のみなのであろうか。無為庵武治を見慣れているせいか、紫ロクロの故に品が下がっているように思えてならない。


 
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次に、顔のアップをお目にかける。細い線による眉目であるが、線のアクセントは眉目の中央部分にあり単調な線になることを防いでいる。眉目の長い線は蛾眉が下品にならない程度のぎりぎりまで湾曲し、目は両瞼の狭い空間一杯に眼点を入れている。目の両端中央から割鼻を描き出し、下端でようやくその割れが顕著になるものの開き具合は控えめである。口は紅の二字口でこれも控えめである。両頬豊かにはんなりとした色香を漂わせるが、穏やかに微笑んでいるようでもあり、相手を凝視するするようでもあり、何とも神秘的な瞳に心が吸い込まれるような思いになる。細やかなようでありながら、ほかのこけしと並べると大胆な迫力を見せるなど意外性に満ちた不思議なこけしであり、無為庵秘蔵の所以である。(尺3寸)

追記 最近は保存主体の風潮があまりにも強すぎ、公開したくはなかったのだが、アンチテーゼとしてこのこけしを選定した。保存についてなどご感想をいただければ幸いである。

(2016.11.2追記)アルバムの写真をスキャンしたがこれだったか自信がない。「撰」の写真でればこの武治の神秘感が伝わるのだが。

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