三寸こけしの話(6)

 三寸の蒐集では、現地歩きをしてもほとんど成果はなかったが、こけし店には随分とお世話になった。神田「ひやね」からは相当数が、西宮「忠蔵庵」からは古品を一括して、北鎌倉「民芸おもと」とは無為庵駆け出しの頃から何かとお世話になっている。四寸蒐集で著名なⅠ氏は無為庵の古い友人で、いろいろと頂戴した。気にかけてくれる友人、こけし店に感謝するのみ。





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 松田徳太郎、鹿間旧蔵、「辞典」「鑑賞」現物。辞典のサイズは誤記。鹿間氏は桜井玩具店で入手しているが、6寸は売り切れで三寸しか残っていなかったようだ。「鑑賞」では「量感のある6寸ものは夢となった」と嘆いている。かつて「ひやね」入札に6寸が出たことがあるが、おかっぱ頭の眉目異なるもので味も無く、鹿間氏が6寸の実物をみていなかったのだと感じたことを思い出す。



 前述のⅠ氏、S氏、無為庵の三人で目黒の「つどい」発行の「木楽」に執筆していたが、Ⅰ氏所蔵左図様式尺余大寸ものを借りて三寸と大寸ものを比較したことがある。この目鼻はやはり大寸のほうが生き生きする。三寸ではどうもちまちましてしまうが、これも大寸を見てしまった故の感想である。小さくても鹿間氏好みのこの味は捨て難い。





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松田初見。遊佐民ノ助かとされていたが、初見の古い時期のものであろう。作者がいずれであろうと品物が変わるわけではないが、価格に歴然とした違いが出るのは何故であろう。希少性、人気度、文献による評価の影響などの複合要因とは思うが、もの自体を直視したいものだ。後年の初見は線の固い情感のないこけしにまってしまうが、この初見は瑞々しく柔らかい筆致の眉目を闊達な胴絵が支えている。大量に製作するためにささっと描いたのであろうが、面描には無意識に注意を払っているようだ。初見の古いものは雨に濡れるアジサイのような鳴子の繊麗を存分に見せてくれる。民ノ助の硬筆ではこの潤いが出せない。



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 小椋泰一郎、佐藤利吉名義。この時期の泰一郎は余りにも定評のあるもので掲出を躊躇ったが、見ていると無為庵好みを端的に示すこけしなのでお目にかける。胴右下が流れており残念ではあるが、眉を描かず一筆の夢見るような目を絶妙に描いている。点状の鼻と口、口にはかすかな紅、顔面に間延びした空間を作らずにおおらかに穏やかな夢をみせる。無造作に挽いた木地はロクロ痕があり、側面裾はへこんでいる。大量に作為の暇なく作られたこけしであればこその情感をみるとき、工人の人柄まで偲ばれるようだ。





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