こけしの話(28) 高橋精助

 すっかり秋めいてきた。裏山の楓、欅の落葉が鬱陶しくなるのも間近である。紅葉は遠くで眺めるもの。麓では落葉との苦闘で風流どころではない。



 今回は高橋精助。嘉三郎の弟ではあるが兄とは全く作風が異なる。植木氏は「眉あげて女人扮する帝王に似る」と詠んだが、うまく表現するものと感心させられる。この評に何を付け加えても蛇足のような気もするが、敢えて蛇足をつけてみよう。



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 精助は比較的数が少なく市場に出ることも稀。たまに出てきてもペッケがほとんどで、直胴は極端に少ない。精助には大寸のペッケも少なからず存在するが、ペッケでは重量感が乏しくなる。可憐を追求するに適当であっても、迫力には欠けてしまう。そもそも精助には小寸でも愛らしいこけしなぞ存在せず、ペッケと相性がいいとは思えないが、好んでペッケを作ったようだ。左図は精助には珍しく巨大な頭部と太い胴の堂々たる体躯をしており、形だけの量感でも相当なものだ。





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 頭部には控えめの髷を配しているが、単調になるのを防いでいる。顔面を広くとり、切れ長ではあるが小さい眼点の眉目を上部中央に描く。撥鼻、二字口、頬紅も小さめで、広い顔面に余白が大きくなっている。目が大きいと幼顔になるが、このこけしでは顔面に対して造作が小さく幼児とはいえない表情をみせる。



 胴のロクロ模様が少々うるさいが裾に大きく余白を残していることで重量感を保っている。写真では分かりづらいが、些事に拘泥せずしかも意志の強さを持つ悠然とした面構え、どっしりとした造形は「帝王」の名に恥じない。嘉三郎の茫洋は大人の風であるが、精助の重厚を「帝王」と評した植木氏の言葉以外に適当な言葉が浮かばない。(尺)





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この記事へのコメント

蝶々
2011年08月05日 22:38
「トゥーランドット」のようですね!
このオペラの配役を「こけし尽くし」で考えたら一体どんな風になるのでしょうか…?
無為庵
2011年08月05日 22:38
蝶々さま
コメントをいただきありがとうございます。
オペラは全くの門外漢ですが、オペラに限らず演劇等の登場人物にこけしを重ねることは考えたこともありませんでした。また違った楽しみ方もできるかもしれません。少し勉強してみようかと思います。 無為庵

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