こけしの話(33) 鎌田文市

 繁忙期も一段落でやっと一息つけるようになったが、疲れが抜けない。10年前ならば疲れていてもこけし棚の戸を開けて呆然と眺めていれば気力を絞り出せたのが嘘のようだ。連休の気分転換に閑話を更新する。







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 今回は蒲田文市「こけしの美」掲載品を採りあげる。鹿間旧蔵品。なんと姿の良いことか。鎌文の形は直胴から極端なロープアパニーエ風まで様々な姿があるが、形だけで見せられるものは限られる。鎌文ならずとも形だけでも見せられるこけしは極めて稀である。直胴に近い形態ながら首から下の緩やかな曲線に腰を帯で締めたように縊らせ、一転して直線を配し最下部にはごく小さい裾広がりで全体を受けるなんとも絶妙な形。裾の控えめな踏ん張りが心地よい。出色の形といえよう。婦人が胸高に帯を締める以前の着物姿はこのようなものであろうか。書いているうちに「見返り美人」図の形を思い出した。



 こけしの形態では鳴子の形が最も洗練されており、遠刈田は形の無駄を極限まで排斥しいる。土湯の三角胴も安定感がある。形が確立したのはせいぜいこの三系統でそのほかの系統ではこれといった特徴がでるまでには至らず各工人の感性の赴くままに造られている。形すら確立できなかったこけしの「伝統」とは何だろう。閑話休題。



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 鎌文は大正期から最晩年まで多くのこけしを作り続け、残る作品数は丑蔵とともに他を圧倒する。その数のゆえか、晩年が第二次こけしブームと重なったゆえか、戦後作の多くが味の薄いものであったゆえか不思議と採りあげられることの少ない工人である。形もさることながら左図のように表情をとっても凡手ではない。勘内、伝内のような外連ともいえるグロ味ではなく、明るく邪気のない鄙の土俗を生き生きと現した手腕は高く評価できる。一見したインパクトには欠けるが見るたびに何かしらの元気をくれるこけしである。無為庵はこの顔を見ると不二家のペコちゃんを思い出す。おつに澄まさず素直に笑うこけしは鎌文のなかでもまことに得難いものである。鬢がどうの眉目が口がどうのなどの解説は一切不要であろう。



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 とはいうものの何かの文献でベレー周縁のかまぼこ状飾り、上図では正面眉毛間上の赤い飾りについての記載を読んだ記憶があるので、研究家向けのサービスで頭頂の写真をお目にかける。どこで読んだか思い出せないが、古いものはベレー周縁の飾りは赤と緑が等間隔に配置され時代が下ると共に前方に移るというものだったと記憶する。左図の写真では見づらいが、上部の赤が正面で左右に赤いかまぼこ、下(こけしの真後ろ)に緑、左右赤に接して前よりに緑のかまぼこが描かれている。その緑と正面の赤の間には飾りはない。この配置が時代区分のきめてになるかどうか不明だがご参考までに。いずれまた均等に配置された鎌文を紹介する。(9寸4分)





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