こけしの話(44) 小林吉太郎

 この4月から勤務先が変わり、気分も一新したが、出勤が早くなり、生活リズムが狂ってしまった。朝の電車がすいており、少々喜ばしくはあるが、冬場を考えると寒気がする。少し落ち着いてきたので、連休に記事の更新を思い立ったが、4月の天候不順から一転してのぽかぽか日和に、二日間をうかうかと過ごしてしまった。



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 小林吉太郎、愛玩鼓楽564番の現物。毎度の下手な写真で恐縮であるが、素人のこととてご容赦願いたい。とはいえ、薄明かりの中で見せるこのこけしの本領をお伝えできない図であることには残念な思いがする。



 吉太郎の古いこけしは残るものが少なく、大半は昭和10年代のようである。晩年作には描彩者が別人と思われるものもあり、形態も種々様々でこれといった定型を持たないといっては言いすぎであろうか?



 ともあれ、様々な形態を持つ吉太郎だが、頭と胴のバランスでは頭部が比較的小さく、縦長に丸いものが多い。小寸であればそれはそれで纏まるのだが、大寸では少々どこか間延びした形になってしまう。掲載の吉太郎は珍しく横広がりの四角い大きめ頭部で形態に安定感ある。吉太郎の形態はお世辞にも褒められたものではないが、まあ、これなら余り苦にはならない。



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 表情をお目にかける。眉目が極端に中央に寄っており、眉目左右の両端が肩の内側に収まるほどである。眉目を斜めに描き、左右の眉目でV字を作るようであり、両鬢との間に空白がある。これが視線のエキセントリックなまでの凝視度をもたらしている。



 このこけしは薄明かりの中で見ると、この眉目が浮き出るようで、狂気すら覚えさせるが、その奥にはそこはかとない慈愛があり、ほっと救われる。眼点が比較的大きいが故に狂気のみではない趣を見せるのかもしれない。もし、眼点がきっちりと点状に打たれていたなら、怨みがましい表情になってしまうであろう。



 すっと胸のうちを見透かすようでいながら、「しっかりなさいな」と無言で励ますようで、無為庵好みにぴったり嵌るこけしである。(9寸7分)







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